人生最後の車選び

小さい頃から車は憧れだった。道路を挟んだ向かいの家にはガレージがあり、米国製のダッジがデンと構えていた。一度ほど乗せてもらったと思うがうらやましかった。小学校へ電車で遠距離通学していた。途中にクラスメートの親が経営する写真屋があった。写真屋さんはダットサンを持っていた。学校の体育で右足足首を捻挫したとき、親切にもそのダットサンで通学の送り迎えをしてくれた。大学受験で希望大学に合格したら何が欲しいと父親に聞かれ、クラウンと答えた。当時の我が家にとっては車は高嶺の花だったが、父親は息子に目標を与えて受験に努力させたかったのだろう。一浪して合格すると母親が言った。「車を買うと無理な約束して、お父さんは!」それでも父は中古のコンテッサを買ってくれた。コンテッサは走行中にしばしばトラブルを起こした。キャブレターからガソリンが噴き出すのである。道路脇に停車してキャブレターを分解掃除するのも「またかっ!」と思ったが、それなりに楽しかった。新車を買ってくれたのはファミリアが最初だった。一人暮らしをはじめて購入した最初の車はホンダ中古の軽だった。名前は忘れた。フランスに留学したときも車を入手した。借家アパートに近所のチラシが入る。フォルクスワーゲンの中古を紹介していた。確か5万円以下なので、それを購入した。この車は走行中にエンジンのクランクシャフトが折れた。修理工場に持って行ったら、修理は不可能と言われた。

結婚してからはまともな車を購入するようになった。最初はホンダアコードのハッチバックだった。家族4人で上越にスキーに出かけたとき、帰宅時に高速道路上で故障が発生してJAFに救援をお願いしたことがある。子供が大きくなるとワンボックスカーが旅行に便利と考えた。家族5名で旅行するときも荷物が多くても気軽に積み込めるからである。ラルゴを使っていたとき足が不自由になった母親をリハビリ病院や整形外科にしばしば運んだ。母親曰く「この車は乗り降りが大変だ。」そこで、床の低いワンボックスカーを選ぶこととして、エスティマを購入した。ハイブリッド車がどのような走りをするか大変興味があった。エスティマハイブリッドと指定して販売店で見積りをお願いすると「お客さん。ハイブリッドは80万円も高くなりますよ。ガソリン代でこれを回収するのは8万キロ以上走ったときですよ!」お客が希望しているのに「アホだ!」と言わんばかりの接客なので、他のトヨタ販売店に行ってエスティマハイブリッドを契約した。現在乗っているのはエスティマハイブリッドである。「80万円を回収するぞ」と約10年かけて10万キロを走った。

最近2時間ほど運転して自宅に戻り車を降りたとき、強烈な目眩を経験した。結局救急車のお世話になり緊急入院したが、ほぼ点滴と一泊だけで退院した。新聞では高齢者の自動車事故が頻繁に報道されている。高齢者の自動車が凶器になる事例を目にして、車選びも考えざるを得なくなった。自分が加害者になることを極力避けなければならないので、最近の自動ブレーキを備えたエスティマが販売されるのを待った。高性能な事故回避機能を備えた車は色々有りそうだが、運転に慣れたエスティマで衝突防止付を選びたい。契約してから2月近く待ったがまだ納品予定日の連絡がない。新しい車は10年間は使うつもりである。現在75歳なので85歳まで運転しているかどうか疑問符がつく。安全な自動運転車がエスティマで出現したら是非試してみたいと考えている。