結婚時期と人生設計

10年以上前に送り出した卒業生と同窓会で久しぶりに会った。学生時代に受けた印象とはうってかわって現役の社会人のたくましさを感じた。「家族は?」と聞くと「まだ一人です」という答えが何人もあった。ただ漫然と恋愛の機会が訪れるのではないかと待っているが、現実は仕事に忙しくて時間ばかりが過ぎていく、ということであろう。小学校から大学まで計画的に学業を積み重ねることと同じく、「結婚は人生で計画的に実行しなければならない最重要課題の一つ」である。30歳に結婚してすぐに子供が生まれたとして、子供が大学を卒業するのは50歳代前半となる。40歳に結婚したら60歳代まで子供の教育費用を稼ぎ出さなければならない。50歳代で幼児を抱えているカップルも知人に居る。
すでに子供3人の養育を終了したわが身は、60歳代半ばで孫の誕生を待っているが、なかなかである。現代の若者たちに、自分の人生で結婚について確かな計画を立て、次世代を担う子供たちをしっかり育てて欲しいと希望している。結婚にも、自ら考えた人生設計と、結婚相手を探す努力と、失敗を恐れずに求愛する勇気が必要である。

会社の品格の見分け方

今週授業で就職活動について質問を受けた。「先生、会社の良し悪しはどのように見分けるのですか?」。4年生の就職活動は終盤で、3年生に対する就職活動のセミナーが学内で開始されている。「通常は会社の経営に関する情報を調べたり、それからその会社に勤めている先輩を訪ねて話を聞くことだね。」「君が考える良い会社とはどんな会社を言っているかい?」学生ははっきりしたイメージを持っていないが、安心して仕事ができる会社を探したいらしい。「就職が決まった先輩になぜその会社を選んだかを質問したら、会社ビルの入り口が立派だったからという答えが返ってきたことがあったよ。」会社の良し悪し、つまり品格はビルのイメージよりは”人”である。
就職活動ではしばしば次のような話を聞く。学生は最初に内々定をある会社からもらって、それでも本命の会社の内々定の発表まではまだ時間がかかる。最初の会社は期限を切って、本人に「必ず就職するという約束をして先生の推薦書を持ってきなさい」と言う。学生は、本命の会社から内々定がもらえるかどうか分からないので、「どうしよう?」と悩む。学生には3種類のタイプがある。最初の内々定先に別の会社も就職活動中であることを告げる学生、最初の内々定先に就職を約束して本命に決まったら最初の会社に謝りに訪問する学生、最初の内々定先に就職を約束し本命が決まったらメールや電話でその旨伝える学生、である。
学生には次のように話したい。最初に内々定をもらった会社が期限を区切って就職の約束を迫ったら、「品格が高い会社」とは言えない。本命の就職活動をしていることを告げて、内々定を取り消されたら「品格の無い会社に勤めなくて良かった」と考えるのが正しい。

機銃掃射って知ってますか?

私が生まれた頃は第二次世界大戦中でした。東京が米軍の大空襲にさらされた頃です。両親は千葉に疎開しました。父は東京の会社に国鉄(省電?)総武線で通っていました。会社から帰宅する電車のなかで米軍戦闘機の機銃掃射にあいました。父はあわてて停止した電車の下に隠れたそうです。戦闘機は電車の線路に沿って飛行し、低空で列車めがけて機関銃を連射します。戦闘機がいなくなったと思って、電車の下から出ようとしたとき、父は隣の人が弾にあたって死んでいるのを見たそうです。
この話は私が小学生くらいのときに父から聞きました。その時父が被弾していたら、私は父無し子になって、満足な勉強もさせてもらえなかったかも知れません。戦争に負けた日本は、戦争に勝ったアメリカとほぼ対等の経済力をつけ豊かになりました。戦争に負けた恩恵で、日本はベトナムもイラクも経験せずに済んでいます。最近の憲法改正論議で、日本を代表するような大会社の幹部が、「日本のエネルギー石油を安全に確保するために憲法改正が必要なのだ」というようなことを発言しているのをテレビ番組で聞きました。「石油と父親のどちらが大切か?」と質問すれば「貧しくてもいい。父親が大切だ。」と皆答えると思います。「強い軍隊を持つことは不幸なことである」と第二次世界大戦後の米国の歴史が教えてくれています。

落ち込んだとき

人生いろいろ経験する。はっきりした理由はないけれど、気分がのらないことがある。仕事はそれなりにこなしているが、「俺の人生はこのままでよいのだろうか?」と考える。20年以上前、日比谷公園の噴水の脇にぼんやり座っているときだった。今日のように5月の気持ちよい晴天だったと思う。昼休み時で周囲には楽しげに会話している多くの人が散歩していた。突然テレビカメラが近づいてきて質問された。「最近の若い人をどう思いますか?」その時は会社での出世が難しいと感じ始めていた時期だった。「次々に優秀な若い人が現れていますね」と答えたことを覚えている。
時に落ち込んでも良い。よく考える機会だ。日比谷公園に来ていた献血車を見て献血した。小さなことだけど自分は社会に役に立つことができる。ちっぽけでいいんだ。良いことをすれば、落ち込みから回復するきっかけになるかも知れない。

就職活動と卒論のどちらが大切か?

5月連休もとうに過ぎ去り、企業から内々定をもらった学生も増えてきた。この時期、企業から内々定をもらえない学生はあせっている。卒業研究はサボり、「就職活動です」、「先輩訪問です」、と全く学校に来ない学生がいる。そのような学生に「卒業研究より就職活動が大切なら企業から単位をもらいなさい」とメールを打ち、「今後研究室出入りは禁止です。卒業研究の単位は出しません」と通知した。
「卒業研究がありますので、就職面接の日程を変更していただけませんか?」と企業の担当者に相談することのできる学生であれば、企業から信用されよう。もし企業側が、「卒業研究があっても、面接の日程を変更することはできません」と回答するのであれば、そのような企業には就職しないほうが懸命である。判断力のある優秀な学生は要らないと返事しているのに相当する。「大学を卒業できなくても、内々定どおり就職できますよ」と説明する企業は無いはずだ。

1年留年すると人生でいくら損するか?

大学に入って勉強しないために単位が大幅に不足する学生が毎年何人か居ます。そのような学生に面接するとき、「1年の留年で人生の稼ぎがいくら損するのか知っているかい?」と質問します。質問された学生はケゲンな顔で何を答えたらよいのかと戸惑いの表情をします。「大学卒業したら、月20万円の月給程度ですから、ボーナスを入れて年300万円の損失になると思うでしょう」と話し続けます。「しかし会社は60歳で定年です。その時の収入は1000万円以上です。君が出世すれば2000万円以上かも知れない。その時の稼ぎを留年により損しているのです。」留年する学生の典型例が、アルバイトに精をだし結局単位不足となる、そのようなケースです。飲食店や雀荘でアルバイトし月10万円稼いだとしても、たいした金額にはなりません。損の仕組みはこのようになります。留年の1月は60歳に稼ぐ毎月80万円を棒に振っているのですから、アルバイト代の10万円を考慮しても、毎月70万円損しているのです。このように人生トータルでは1000万円以上の損をしてしまうことを理解してもらえるでしょうか。親は子供に人並みの学歴を与えようと必死です。100万円を超える高額の学費を支払うので家族の損はますます増えます。「単位が取れないような生活しかできていないなら、学校に未練を残さずに退学しなさい」と話します。

新入社員はお荷物だ

会社に就職すると研修のあと新入社員として職場に配属される。学生の皆さんは、新入社員がすぐに仕事ができると考えているがそれは間違い。新入社員は全く役にたたない。それどころか、数年先輩の社員が新入社員を面倒見る係りを割当てられたりしていて、その先輩にとって大変迷惑な話なのだ。先輩はただでさえ仕事が忙しいのに、新入社員の面倒を見る仕事が増えてパニックになってしまう。
そもそも新入社員は職場で皆が使う言葉が分からない。どの職場にも特有の専門用語がある。皆が何を話しているのか分からなければ、仕事を手伝うこともできない。「そんなことも知らないのか!」という先輩の発言があっても気にしないこと。知らなくって当たり前と開き直って、先輩に迷惑を承知で教えてもらおう。

大学で学んだことは企業で役にたつのか?

40年ほど前に私が就職した企業の新人研修会で講師が話した言葉を覚えています。「君たちが大学で勉強したことはこの会社では役に立たない。役に立つのはせいぜい中学校で学んだオームの法則である。それ以外は全て企業研修で再度勉強しなおしてもらう。」だったら何で大学卒を採用するのだろうと思いました。
学生と輪講で討論することがあります。「大学で学んだ知識が社会で役に立つと考えますか」学生は変な質問をする教授だと考えているでしょう。会社に入ったとき、企業が求める知識の範囲はとてつもなく広い。上司が何か調べるように指示してきても、知らない場合が大半である。従って、大学で学ぶことは、「自分が知識を持ち合わせていないことを調べて、自分の知識として獲得する能力なのです。」
大学を卒業したら勉強する必要がなくなると、卒業を心待ちにしている学生には、この説明は理解できないかも知れない。

こまった新入社員だ

皆がうらやむような大企業に4月から新入社員が入ってきました。ある新入社員が廊下で大声で立ち話をしているのを会社の上司が耳にしました。
「毎日つまらない仕事ばかりなんだ。書類の整理とか電話番とか、大学院を卒業して会社に入ったんだから、もっと俺にふさわしい仕事があるはずだ。」
上司は私に言いました。「会社の廊下はお取引先など外部の人が多数出入りしている。そのようなところで平気で新入社員が会社の扱いに文句を言っている。困ったものだ。」

先生、私が内定をもらった会社は大丈夫ですか?

大学3年生の終わりから4年生の前半まで学生は就職活動に振り回されています。毎年のように就職先の企業から内定をもらった学生が推薦状をもらいに来て、そして私に質問します。「私が内定をもらったこの会社は”だいじょうぶ”ですか?」学生の質問は、「一生安泰に仕事ができて、つつがなく老後に入れる会社ですか?」という意味に聞こえる。「”だいじょうぶ”という意味は?」と聞き返してもはっきりした返事はない。
「今大企業でも30年以上”だいじょうぶ”な会社はないよ。」
「会社はひとたび危ない状況になれば人員整理をする。君も人員整理にあうかも知れない。」
「それに君が社長になったら会社をつぶすのは簡単なことさ」
大企業がたくさんの新入社員を採用して、皆が会社を頼りにしてよりかかるそんな会社を選べば、その企業はいずれなくなる。
「どんな大企業でも君が背負うつもりでなければ、30年以上大丈夫はありえないよ」
「……」